4292 1カ月注射もまじだったか エイズと社会ウエブ版138


 確か3月にヴィーブヘルスケアが抗レトロウイルス薬の新薬を日本でも発売するという記者会見を行ったときのことだったと思う。1カ月に1回、注射すれば効果が持続する抗レトロウイルス薬の研究も進められているといった話がちらっと出た。

 正確に言うと、出ているような感じがした。

 私は同時通訳のイヤホーンというのがあまり好きではないうえ、多少の見栄もあり、英語の会見でもそのままイヤホーンを使わずに聞いて、分からないのに分かったような顔をしていることがよくある(お恥ずかしい)。この会見のときもそうだった。

ん? 1日1錠の時代が来たかと思ったら、さらに1カ月に1回、注射をすればよくなるような研究も進んでいる・・・。ちらっと、そんな話をしているようだ。でも、まさかね、きっとまた聞き間違いだろうということで、そのまま忘れていたら、実はもう、そうした研究も進められていますね。

大阪府立大学の東優子先生に教えていただいたニューヨークタイムズのウエブサイトの Are We Ready for H.I.V.’s Sexual Revolution? (性の革命を迎える準備はできているか)というPrEP(曝露前予防)関連の記事にはこんな記述がある。
http://mobile.nytimes.com/2014/05/24/opinion/sunday/ready-for-hivs-sexual-revolution.html?referrer

 A recent survey of 200 young gay men conducted by Perry N. Halkitis, a behavioral researcher at New York University, found that if a three-month Truvada shot existed, 79 percent of them would prefer it over daily pills. Two studies in monkeys have already tested the long-lasting injectable concept, and it worked.
ニューヨーク大学の行動学研究者、ペリー・N・ハルキティスが200人の若いゲイ男性を対象に行った最近の調査によると、3カ月に1回、ツルバダの注射をすればよいのだったら、毎日錠剤を飲むより、そちらの方がいいという回答が79%に達していた。サルで長期に効果が継続する注射薬の研究も2件、進められ、結果はよさそうだ)

 サルによる2件の研究については同じくニューヨークタイムズのサイトに3月4日付で Injections Providing Protection Against AIDS in Monkeys, Studies Find という記事が紹介されている。
http://www.nytimes.com/2014/03/05/health/injections-provide-durable-protection-against-aids-in-monkeys-studies-find.html?ref=donaldgjrmcneil

 数週間の予防効果が認められ、3カ月の持続も考えられるということで、治療薬というよりPrEPの予防薬を開発するための研究のようだ。あくまでサルにおける成果ということなので、人にも適用できるようになるかどうかは分からないが、研究者はいろいろな可能性を探っているもんですね。薬がすべてということではなく、かといって薬で予防なんて・・・と頭から否定するのでもなく、予防の選択肢が増え、なおかつ他のさまざまな予防対策の効果も高めていけるようなかたちで、研究者の努力が生かせるようになるのなら、大いに歓迎すべきことではあります。英語で言うところの cautiously optimistic ということかなあ。どなたかこの分野に詳しい専門家の解説を仰ぎたいですね。