4287 治療アクセス拡大への課題 エイズと社会ウエブ版137


 世界基金日本委員会(FGFJ)が発行するFCFJレポートNo6を送っていただきました。ウエブサイトでもpdf版を見ることができるのですが、やはり旧世代と申しましょうか、絶滅危惧種の新聞記者としては紙の媒体の方が短いレポートでも、読もうかなという気になります。ウエブ版は情報収集のためには非常に便利ですが、紙のメディアは読みながらあれこれ思うことができる。そんな差でしょうか(・・・といったことをネットで書くのもどうかとは思うけど、それはもう棚からぼた餅、じゃなかった棚に上げておいて)。
http://www.jcie.org/japan/j/pdf/fgfj/02/siryou/fgfjreport06.pdf

 武田薬品工業のコーポレートコミュニケーション部(CSR)シニアマネージャー、金田晃一さんが「現場目線の医薬品アクセス」というタイトルでタンザニア視察のレポートを書かれています。ぎゅっと圧縮された内容ですが途上国における治療へのアクセス拡大について3つの課題あげられているのが印象的でした。 

 1 医薬品が物理的に病院や診療所に届いているか

 2  医薬品が整理・整頓され、必要なときに使える状態にあるか

 3 医薬品を扱える十分な数の医療スタッフがいるか

 配送、管理、人材ということですね。治療アクセスの課題の第一は、供給可能な価格で医薬品を提供できるかどうかにある。このことは、これまでたびたび指摘されてきたし、実際にその通りなのですが、では薬の価格が安くなればそれで問題が解決するのかというと、必ずしもそういうわけではない。必要な治療が必要な人に届くためには、価格以外にも障壁といいますか、問題点がいくつもあります。

 ただし、そうした問題点を持ち出す動機といいますか、そのあたりにはちょっと含むところがある発言もないことはないので、注意しておく必要があります。「だから薬を安くしたってしょうがないのよ」といったアクセス実現に否定的な議論の根拠にされてしまうようなケースですね。私などは外野席で見ているだけなのですが、世界基金もこうした議論にはけっこう手を焼いてきたような印象を受けます。

 金田さんのレポートには、こうしたニヒリズムとは一線を画し、短くてもずばっと核心を突くような魅力があります。供給可能な価格を実現することで、逆にアクセスを確保するための現実的課題がより見えやすくなり、その結果、そうした課題に対応するためのアクションもまた、十分とは言えないにしてもすでにとられている。そして、それがひいては医療医基盤強化を一歩、二歩と進めていくことにもなる・・・といったことが納得できるように説明されています。おっと、報告より、こちらの紹介の方が長くなってしまいそうですね。ご一読をお勧めします。紙のメディアがお手元にない方は、PDF版でご覧ください(やっぱりネットは便利ではある)。