4275 エイズ動向委員会報告過去最多1590件 2013年確定値 エイズと社会ウエブ版134

 

 昨年(2013年)1年間の新規HIV感染者・エイズ患者報告数(確定値)が23日、厚労省エイズ動向委員会でまとまった。年間報告数は計1590件で、過去最多となっている。427日(日)の東京プライドパレードでは、HIV/エイズ分野のNPO関係者が《AIDS IS NOT OVER…エイズはまだ終わっていない》をテーマに掲げ、表参道や原宿をパレードしているが、昨年の報告数はまさにそのメッセージを裏付けるかたちになった。

 

HIV感染者報告数 1106件 過去2

エイズ患者報告数  484  過去最多

感染者・患者合計  1590件 過去最多

 

 これまで感染者報告で最も多いのは2008年の1126件。また、エイズ患者報告で最も多かったのは2011年の473件、感染者・患者合計は2008年の1557件だった。

 

 わが国の新規HIV感染者・エイズ患者報告数は2007年以降に1500件前後で推移しており、2013年までの7年間だけで計1万件を越えている。このため、動向委員会では国内の流行について「高止まりのまま横ばい」の状態にあると見ている。昨年の報告もこうした枠内での推移ではあるが、流行に対する社会的な関心の低下傾向が続けば、再び増加傾向に転じる恐れも強い。

 

 動向委員会の岩本愛吉委員長(東京大学医科学研究所教授)は23日夕、委員会終了後の記者会見で確定値報告の概要とあわせて委員長コメントを発表し、国民に向けて「引き続きHIV/エイズについての理解を深めていただきたい」と呼びかけた。さらに各自治体に対しても「引き続きエイズ予防指針を踏まえ、個別施策層(特にMSM)を中心に、利用者の利便性に配慮した検査・相談事業に取り組むとともに、国民のHIV/エイズに対する関心を高め、受検行動に結びつけるよう、普及啓発に努めることが重要である」と述べ、継続的な努力を促している。

 

 今回の報告、およびそこから考えられる流行の現状や対策の課題については、「エイズと社会ウエブ版」でさらに検討していきたいと思うが、とりあえず本日の委員長コメントから《まとめ》の部分を引用して紹介しよう。コメントの全文はAPI-Netエイズ予防情報ネット)に掲載されているので、あわせてご覧いただきたい。

 http://api-net.jfap.or.jp/status/2013/13nenpo/nenpo_menu.htm

 

委員長コメント(2013エイズ発生動向の概要について)

《まとめ》

 

1.平成252013)年における新規HIV感染者報告数(1,106 件)は、平成202008)年に次いで過去2 位、新規AIDS患者報告数(484 件)およびHIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数 1,590 件)は過去最多であった。

 

2.新規報告数(平成252013)年は1,590 件)のうち、新規AIDS患者報告数(平成252013)年は484 件)が約3 割を占める状況が続いている。HIV感染後、適切な治療によりAIDS発症を抑えることができるため、AIDS発症前にHIV感染を早期発見することが重要である。

 

3.新規HIV感染者報告数および新規AIDS患者報告数の多数を占めるのは日本国籍男性で、感染経路としては同性間性的接触が過半数を占める。年齢については、新規HIV感染報告数は20代から30 代が多いが、新規AIDS患者報告数は30 代以上が多く、ここ3 年で伸び率が高いのは50 代以上である。若年層のみでなく、50 代以上の年齢層においてもHIV検査は重要である。

 

4.新規HIV感染者報告数および新規AIDS患者報告数の合計は、ここ7 年間で1 万件以上報告されており、累積では23,015 件の報告がある。

 

5.各自治体においては、引き続き、エイズ予防指針を踏まえ、個別施策層(特にMSM)を中心に、利用者の利便性に配慮した検査・相談事業に取り組むとともに、国民のHIV/エイズに対する関心を高め、受検行動に結びつけるよう、普及啓発に努めることが重要である。

 

6.国民は、引き続きHIV/エイズについての理解を深めていただきたい。早期発見は個人においては早期治療、社会においては感染の拡大防止に結びつくので、感染予防に努めるとともに、保健所等における無料匿名のHIV抗体検査・相談の機会を積極的に利用していただきたい。

 

注1)HIV感染者:感染症法の規定に基づく後天性免疫不全症候群発生届により無症候性キャリアあるいはその他として報告されたもの。

 

注2)AIDS患者:初回報告時にAIDS と診断されたもの。(既にHIV 感染者として報告されている症例がAIDS を発症する等病状に変化を生じた場合は除く。)

 

注3)個別施策層:感染の可能性が疫学的に懸念されながらも、感染に関する正しい知識の入手が困難であったり、偏見や差別が存在している社会的背景等から、適切な保健医療サービスを受けていないと考えられるために施策の実施において特別な配慮を必要とする

人々

 

注4)M M:男性間で性行為を行う者をいう。

 

なお、平成25(2013)年エイズ発生動向年報の詳細については、7 月下旬に年報を公表予定である。