4251 【鎌倉海びより】72砂浜で祈りをささげた日

 夕方が明るくなってきましたね。本日のSANKEI EXPRESSに掲載された連載コラム【鎌倉海びより】です。

 

【鎌倉海びより】72  砂浜で祈りをささげた日
http://www.sankeibiz.jp/express/news/140304/exg1403041200000-n1.htm 

 東日本大震災被災地の復興を願い、鎌倉の鶴岡八幡宮神道、仏教、キリスト教合同の東日本大震災追悼・復興祈願祭が初めて執り行われたのは2011年4月11日だった。震災からちょうど1カ月後。計画停電の長い夜を経験した鎌倉にようやく観光客が戻り、初夏を思わせる強い日差しに心も体の筋肉もほぐれていく。そんな感じの午後だった。

 境内の舞殿では、鎌倉市内の神社の神主さん、鎌倉仏教会のお坊さん、キリスト教諸教会の神父さんや牧師さんが順番に祈りをささげる。その周りを囲むたくさんの人たちも宗教や宗派を超えて被災した人たちへの思いを一つにした。

 式典の後、境内を出発した参列者は、滑川河口の由比ガ浜まで1.8キロの若宮大路を行進し、砂浜で再び被災地の復興と海の安全を祈願した。春とはいえ、海辺の夕風は冷たい。震災の後には、どこか海辺に出ることをいとうような空気も町の中にはあった。久々の砂浜に行進の人たちが集合したころ、ぐらぐらと地震があった。 

  

 あわてて砂浜から国道134号の歩道に避難する人もいたが、しばらくしてスマホ地震情報をチェックした人から「津波はありません、大丈夫」と声があがり、再び砂浜に戻って祈願が続けられた=写真。

 以来3年。合同祈願祭の会場は建長寺カトリック雪ノ下教会に引き継がれ、今年は3月11日に再び鶴岡八幡宮に戻る。「真剣な、真実の祈りは宗教、宗派、形式を超えて互いに共鳴しあう」(祈願祭趣意書)という思いは変わらない。

 そして、鎌倉市内では当日夜、停電の中で過ごした暗い一夜を忘れないよう照明やテレビを消し、ロウソクに火をともして静かに時を過ごすロウソクナイトも呼びかけられている。