4191 HIV治療と知的財産権を議論  《HIV治療へのアクセス向上に関する専門家会議》

 途上国における抗レトロウイルス治療の普及について、知的財産権の観点から専門家が検討する会議がニューヨークで9月4、5日の両日、開催されました。国連開発計画(UNDP)とともに会議を主催した国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトにFeature Storyが掲載されているので、その日本語仮訳をHATプロジェクトのブログにアップしました。

 

 《HIV治療へのアクセス向上に関する専門家会議》
http://asajp.at.webry.info/201309/article_5.html

 

 昨年7月9日に報告書を発表して解散し た「HIVと法律に関する独立の世界委員会」のフォローアップ会合という位置づけの会議ですね。報告書の提言は多岐にわたっていましたが、今回はそのうち 《低価格のHIV治療薬(特に第二世代薬)の普及を妨げる過度の知的財産保護政策が治療ならびに予防の障壁となっている》という指摘に対応して、その障壁 を乗り越えて行くにはどうしたらいいかということが主に議論されたようです。

 

 《世界貿易機関WTO)のTRIPS(貿易の知的財産権に関する側面)合意は各国に対し、製薬会社に長期的な薬の独占権を認めるような特許条 件を含め、高水準の知的財産権の設定を我慢することも求めている。1994年にTRIPS協定が署名された際、貧困国に対しては一定の条件のもとで、安価 な薬を製造したり輸入したりすることを認める条項が盛り込まれた。しかし、実際には富裕国からの圧力がこうした特別条項の適用をしばしば妨げている》

 

 会議ではこうした状況の打開策として、医薬品の知的財産権について新たな枠組 みの構築を求めているわけですが、「分かっちゃいるけど」みたいな面もあります。WHOは今年改訂した治療のガイドラインHIV陽性者に対する抗レトロ ウイルス治療の早期開始を推奨していますが、道はまだ遠しの感は否めません。

 

 では、そのlong and winding roadを具体的にどのようにして進んでいくのか。やっとここまできたという点では、それだけでもエイズ対策の大きな成果だと思いますが、だからこそ、ここで「エイズは治療できるんでしょ。だったらもう、エイズ対策はお医者さんにまかしておけばいいじゃないの」みたいな気分が広がらないようにしたい。

 

 やれやれ。憎まれ口ばかり叩くのにもいい加減、疲れてきたけど、もうちょっとがんばるかな。なお、昨年の委員会報告書にご関心がお有りの方は、参考までにこちらもご覧ください。

HIVと法律世界委員会報告「HIVと法律:リスク、権利と健康」》
http://miyatak.iza.ne.jp/blog/entry/2751707/