グローバルファンドに5年間で10億円の寄付 タケダイニシアティブ2

 武田薬品工業武田薬品)は63日、世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)に対し、2020年から5年間で10億円を拠出することを発表しました。『武田薬品がグローバルファンドの増資への拠出を民間企業として初めて表明』という見出しのニュースリリース武田薬品とグローバルファンドの連名で出されています。 

https://www.theglobalfund.org/media/8491/newsrelease_2019-06-03_newsrelease_jp.pdf

 グローバルファンドは途上国の感染症対策を資金面から支援するため、3年ごとに「増資」という名目で寄付を募っています。

 今年は2020年から22年までの3年間分の増資の年に当たっており、10月にフランスのリヨンで増資会合が開かれます。すでに先進諸国の中にはこの会合に先立って資金拠出誓約額を表明している国もありますが、民間企業としては今回の発表が初めての誓約になります。

 武田薬品の寄付(5年間で10億円)の中には、第6次増資の対象となる3年分も含まれているため、見出しはこの点を重視したわけですね。

 武田薬品はこれまでの10 年で合計10億円をグローバルファンドに寄付し、「タケダ・イニシアティブ」としてアフリカの保健医療人材の能力開発のために活用されてきました。

 今回はその寄付パワーが『タケダ・イニシアティブ2』として倍増されるという発表でもあります。リリースによると『アフリカの数ヵ国の産前・産後健診に質の高い HIV結核、およびマラリア対策を統合することにより母親と子どもの健康改善を支援する』ということです。

 詳しくは両者の提携を支援し、調整役を担ってきたグローバルファンド日本委員会のサイトの記事をご覧ください。

f:id:miyatak:20190603222342p:plain

©The Global Fund/Andrew Esiebo


fgfj.jcie.or.jp

 

 武田薬品、グローバルファンドのそれぞれのリリースにもアクセスできます。

 

『各国における医薬品その他の医療用品の地元生産促進に関する国際機関共通声明』

保健分野に関係する6つの国連機関・国際機関が、低・中所得国LMICsによる医薬品や医療用品の国内生産促進について声明を連名で発表しました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに掲載されたプレス声明の日本語仮訳を作成したので紹介しておきましょう。世界保健総会(WHA)開催中の524日にスイスのジュネーブで発表されたようです

 『公衆衛生課題としてみれば、地元生産の促進には包括的なアプローチが求められています。政策の一貫性と規制システム強化、生産の持続可能性を維持するための資金、ビジネス面での慎重な評価、人材育成、生産技術とニーズに対応したイノベーションへのアクセス、投資へのインセンティブなどの要因を総合的に考え、製造業者が国際標準の品質を確保し、生産を持続できるだけの競争力を得られるようにする必要があるのです』

 訳すのに苦労するといいますか、しまいには訳している本人も、日本語で読むと何を言ってるんだか・・・とため息が出てきてしまう拙い翻訳ですが、悪しからず。

 『国際機関の多くも、品質の保証された保健医療用品の生産については、使用する場所の近くで行えるようにしてほしいとの期待を表明しています。マーケットに使用機会を提供することのプル効果は、成果を上げる大きな要因になり得ます』

 みんなで集まって声明を出すと、あれもこれもと入れたくなり、ここはこう直してほしいという注文も多くなり、まとめるのが大変なのかもしれませんね。

UHCSDGsの観点からも極めて重要なことなんだけど、それがなかなか進まないのはどうしてか!?という、何と言いますか、もどかしさのようなものも晦渋な文言からはうかがえます・・・すいません、言い訳ばかりで。以下、日本語仮訳です。

 

f:id:miyatak:20190602224357j:plain

各国における医薬品その他の医療用品の地元生産促進に関する国際機関共通声明

 プレス声明

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2019/may/20190524_local-production-medicines

 

 低・中所得国(LMICs)は品質の保証された医薬品その他の医療用品の地元生産に関心を高めています。LMICsにとっては、それが品質の保証された医薬品その他の医療用品へのアクセス改善とユニバーサルヘルスカバレッジUHC)の実現、そして持続可能な開発目標(SDGs)の保健関連のターゲットや広範な開発分野の目的達成を助けることになるからです。

 「地元生産」という用語は様々な定義が可能です。本声明では、「地元」は国や地方などの地理的な場所、「生産」は例えば製薬に関していえば、医薬品生産のバリューチェーンの活動すべてを指します。公衆衛生課題としてみれば、地元生産の促進には包括的なアプローチが求められています。政策の一貫性と規制システム強化、生産の持続可能性を維持するための資金、ビジネス面での慎重な評価、人材育成、生産技術とニーズに対応したイノベーションへのアクセス、投資へのインセンティブなどの要因を総合的に考え、製造業者が国際標準の品質を確保し、生産を持続できるだけの競争力を得られるようにする必要があるのです。

 2008年の第61回世界保健総会(WHA)で採択された「公衆衛生イノベーションと知的財産に関する世界的な戦略 および行動計画」は、地元生産およびそれに関連する技術移転について、イノベーションと能力構築とアクセス改善を促す要素のひとつと位置付けています。さらに最近では、加盟国は20185月の第71WHAで、世界的な医薬品とワクチンの不足、およびアクセス確保の観点から地元生産の重要性を強調しています。

 国際機関の多くも、品質の保証された保健医療用品の生産については、使用する場所の近くで行えるようにしてほしいとの期待を表明しています。マーケットに使用機会を提供することのプル効果は、成果を上げる大きな要因になり得ます。とりわけ業界の発展と保健人材の開発に向けた関係者間の協力があれば効果は高くなります。

 地元生産の強化には分野横断的な努力が必要です。生産を持続可能にするための投資を促し、法的、技術的環境を整えていくには、多分野にまたがる協力が求められています。LMICsの多くは、品質が保証された医療製品を生産、供給する地元製造業者の能力も、品質と効率と安全性を保障するための国の監督規制体制も、まだ十分とはいえません。国産か輸入かに関わりなく、保健医療用品の供給は、国際的な適正基準(注1)その他の基準を満たすよう規制能力の強化を整えて進める必要があります。各国および地域が持続的な成果をあげられるようにするには、能力構築と体制の整備、産業育成のための国際社会とLMICsとの緊密な協力が不可欠です。

 製薬業界のグローバル化が進み、各国の事情も異なる中で、品質の保証された医薬品と医療用品の地元生産には「どこにでも当てはまるアプローチ」があるわけではありません。それでも、品質の保証された医薬品・医療用品へのアクセス改善とUHC達成に対して地元生産が担い得る重要な役割を認識し、下記の組織は地元生産力の強化に向け、戦略的かつ包括的なかたちで各国政府および関係者と協力して取り組んでいきます。それぞれの専門分野と使命に基づき、貢献を果たすことを私たちは約束します。

 

2019524日、ジュネーブにて

 テドロス・アダノム・ゲブレイェス世界保健機関WHO)事務局長

 リー・ヨン国連工業開発機構(UNIDO)事務局長

 ムクヒサ・キトゥイ国連貿易開発会議(UNCTAD)事務局長

 グニラ・カールソン国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長代理

 ヘンリエッタ・フォア国連児童基金UNICEF)事務局長

 ピーター・サンズ世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長

 

(注1)製造最適基準、医薬品の臨床試験実施基準など

 

 

 

Interagency statement on promoting local production of medicines and other health technologies  

  Press statement

 

Low- and middle-income countries (LMICs) are becoming increasingly interested in developing the local production of quality-assured medicines and other health technologies. This is due to its potential to assist LMICs in improving access to quality-assured medicines and other health technologies, achieving universal health coverage (UHC), and reaching the health-related targets and broader developmental objectives of the Sustainable Development Goals.

The term "Local Production" can be defined in various ways. For the purposes of this statement, "local" refers to the geographical location, i.e. occurring in the country or region, and "production" — in regard to pharmaceuticals for example — refers to all activities along the pharmaceutical manufacturing value chain. Within the context of the public health agenda, promoting local production requires a holistic approach that considers policy coherence, regulatory systems strengthening, access to finance for sustainable production, a careful assessment of the business case, development of skilled human resources, access to technology for production and needs-based innovation, creation of investment incentives and other factors, to enable manufacturers to comply with international quality standards, be competitive and engage in sustainable manufacturing.

The Global Strategy and Plan of Action on Public Health Innovation and Intellectual Property, adopted at the 61st World Health Assembly (WHA) in 2008, cites local production and related transfer of technology as one of the elements to promote innovation, build capacity and improve access. More recently, at the 71st WHA in May 2018, Member States highlighted the importance of local production in the context of the global shortage of, and access to, medicines and vaccines.

A number of international organizations have also expressed their desire to source quality-assured medical products closer to the point of use. The pull effect of significant market opportunities can be a major factor in driving progress, particularly when aligned with partnerships in supporting the development of the industry and health workforce.

 

Strengthening local production is a cross-cutting endeavour. Sustainable local production requires effective multisectoral collaboration in order to promote enabling investment, legal and technical environments. In many LMICs, the capacity of both local manufacturers to produce and supply quality medical products and the national regulatory authority to ensure quality, efficacy and safety is insufficient. Any supply of medical products — both through local production and imports — should go hand in hand with the strengthening of regulatory capacities in order to achieve compliance with international GxP[1] and other quality standards. Close partnership between the international community and LMICs is essential to support countries and regions to build the capacities, institutions and industries that can sustain the progress made.

 

With the globalization of the pharmaceutical industry and the variety of country contexts, there is no "one-size fits-­all" approach in promoting local production of quality-assured medicines and other health technologies. However, in recognition of the important role local production can play in improving access to quality-assured medical products and achieving UHC, the undersigned organizations aim to work in a collaborative, strategic and holistic manner in partnership with governments and other relevant stakeholders to strengthen local production. We are committed to contribute based on our respective organizations' expertise and mandate.

Launched in Geneva on 24 May 2019

Dr Tedros Adhanom Ghebreyesus, Director-General, WHO

Mr Li Yong, Director-General, UNIDO

Dr Mukhisa Kituyi, Secretary-General, UNCTAD

Ms Gunilla Carlsson, Executive Director, a.i., UNAIDS

Ms Henrietta H. Fore, Executive Director, UNICEF

Mr Peter Sands, Executive Director, The Global Fund

 [1] Good manufacturing practices, good clinical practices, etc.

梅雨はまだ わっしょいわっしょい 夏神輿

 アジサイはもうあちらこちらで咲いていますが、梅雨入りはもう少し先でしょうか。初夏の風の中、鎌倉の6月は祭りで明けました。

f:id:miyatak:20190601154717j:plain

 六地蔵の複雑な交差点の角にある由比ガ浜公会堂前です。大小三基の神輿が並び、テントの両脇に葛原岡神社の提灯。ああ、懐かしいなあ。豊かだったとはいえない戦後の復興期に東京は神田で生まれたおじさんの場合、お神輿を見ただけで懐かしさにたちまち涙が浮かんできちゃうのね。神田明神のお祭りは五月だったけれど、鎌倉はこれからですね。
 お神輿がざぶざぶと海の中を進んだり、提灯を掲げた夜神輿がずらりと並んだり・・・それぞれに特徴のあるお祭りがこれから続きますが、由比ガ浜のお神輿は、わりとオーソドックスです。おっ? 窓の外から、聞こえてくるのは、わっしょいわっしょいの掛け声ではないか。いいねえ、祭りはこれじゃなければ、と勝手に思う。美空ひばりさんだって歌っていたでしょう。
 葛原岡神社は、由比ガ浜地区からはかなり北に離れた源氏山公園の隣にあり、『後醍醐天皇を助けて、鎌倉幕府を倒そうとした公家の一人』(かまくら子供風土記)である日野俊基を祀っています。計画が発覚して葛原岡で処刑された悲運の忠臣ですね。
 離れてはいますが、この葛原岡神社が由比ガ浜地区の鎮守なので、6月の頭には町にお神輿と山車が繰り出します。今年は6月1日(土)宵宮祭、2日(日)由比ガ浜地区神輿祭、そして3日(月)が神社で神前祭・墓前祭のラインアップですね。
 鎌倉は処刑、暗殺、謀反、裏切り、滅亡といった悲しい歴史がぎゅっと詰まった土地なのですが、その鎮魂の思いがひそかに受け継がれてきたせいでしょうか。観光で訪れる皆さんは「癒される」といいつつ、穏やかな笑顔で町を歩いています。

 

必要な情報を分かりやすく TOP-HAT News 第129号

T as P 予防としての治療

U=U  検出限界値以下なら感染しない

Living Together 私たちはもう一緒に生きている

 

 同じようなメッセージを伝えているように見えますが、同じではない部分もあります。逆にいえば、同じでない部分もあるということは、メッセージとしての共有部分が大きいということでもあります。その共通の部分を重視するか、微妙ではあっても異なる部分の意味の相違にあえて重点を置くのか。

 HIV/エイズ対策は広く社会の多くの人の理解と共感を得なければ進めていけません。同時にHIV感染の拡大を促す要因は、社会の中で比較的、少数に属する人たちが直面する課題に深くかかわっています。したがって、そうした諸課題への対応ももちろん不可欠です。

 どちらを重視するかと言えば、それは両方です。どちらかではありません。だからこそメッセージは工夫に工夫を重ねる必要があり、そのベースとなる考え方も、経験の蓄積を踏まえつつ、深めていかなければなりません。

 TOP-HAT News129号は、必要な情報を分かりやすく伝えるために作成された『UPDATE! いくつ知っている?』という冊子を紹介しています。

 T as Pも、U=Uも、それぞれ重要なメッセージなのですが、Living Togetherとはひとつ重要な相違があることにも留意しておくべきでしょう。

それは前の二つが治療の進歩を前提にしたメッセージであるのに対し、前者は有効な治療法がなかった時代に困難な流行と対峙する中で、その基本姿勢として生み出された考え方であるということです。

治療が進歩したのだから、もうLiving Togetherはいらないと言わんばかりの言動に接することも最近は(まれにですが)あります。決してそうではないということは改めて(そして何度も)強調しておく必要があるでしょう。T as Pも、U=Uも、Living Togetherという基本姿勢があって、はじめて成立するメッセージなのではないか、少なくとも私はそう思っています。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第129号(20195月)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

TOP-HAT News特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに 必要な情報を分かりやすく

 

2 U=U』と『LIVING TOGETHER』の麗しくも悩ましい関係

 

3 検査普及週間と検査相談月間

 

4 UNAIDSのミシェル・シディベ事務局長が退任

 

◇◆◇◆◇◆

 

1 はじめに 必要な情報を分かりやすく

 ピンクの表紙に大きく『UPDATE! いくつ知っている? 』の文字。そして、その題字下には少し小さな文字でこう書かれています。

エイズ対策はなぜか略字と数字のオンパレード、これじゃ何のことだか』

いやあ、確かに・・・とうなずかざるを得ません。

f:id:miyatak:20190531231018j:plain

 試みに『U=U』とか『PrEP』とか『90-90-90』とか、エイズ対策に深くかかわる人たちの間では比較的、当たり前のように使われるようになった用語について、街を行く人たちに尋ねてみてください。10人中おそらく8人、いや9人は「知らない」と答えるのではないでしょうか。

蛇腹式になったピンクの表紙のパンフレットは、42829日に代々木公園で東京レインボープライド2019というイベントが開かれた際に、コミュニティセンターaktaNPO法人ぷれいす東京が開設した合同ブースで配布されました。最近のキーワードを短く、そして分かりやすく伝える試みの一つです。

パンフはこちらのウェブサイトにも掲載されているので、ご覧ください。

 https://aidsweeks.tokyo/update/

治療をめぐる最新のコンセプトを伝えるために、聞きなれない用語が次々に登場しています。医学研究の進歩がもたらした大きな成果というべきなのかもしれませんが、そのスピードに世の中がなかなか追いつけない側面もあります。

HIV/エイズに対する社会的な関心の低下が、予防対策の課題としてしばしば指摘されてきました。もっと、一人一人が自分のこととして関心を持つようにならないと・・・。

でも、それを世の中のせいにしてしまったのでは、そもそも啓発の意味がありません。たとえば、『U=Uについて説明してください』と急に言われたら、長くエイズ対策に取り組んできた人でも、けっこう焦ってしまうのではないでしょうか。

治療の進歩はHIV/エイズをめぐる現実を大きく変えてきました。その成果は、HIVに感染している人や感染の高いリスクに曝されている人に対する社会的な差別や偏見を解消するうえでも大きな力になります。

しかし、そうした進歩や変化を広く多数の人に伝えるにはどうしたらいいのか。この課題は依然、残されたままです。

その課題に対応するため、蛇腹のパンフには以下の6つのキーワードに『日本の現状』を加えた7項目が取り上げられています。絞りに絞った選択ですね。

U=U

LIVING TOGETHER

90-90-90

HIV check

PrEP

COMBINATION予防

 印刷物として配布されたのは日本語版だけでしたが、ウエッブには英語版と中国語版も掲載されています。

2020年の東京オリンピックパラリンピックを控え、多言語による情報の発信もまた、重要な課題の一つですね。厚労省の委託事業としてaktaが運営しているHIV情報サイト『HIVマップ』には昨年11月からH.POTが開設されています。

 http://www.hiv-map.net/h.pot/

『日本にいる、日本語を母語としないゲイ・バイセクシュアル男性のために、HIV/AIDSの基本情報をそれぞれの言語でまとめたウェブサイト』であり、11言語に対応しています。

 HIV/エイズ情報を必要とする人たちのコミュニティ、関連分野のNGO/NPO、行政機関、研究者、企業などが協力して「必要な人に、必要な情報を、受けやすいかたちで」伝える試みは、少しずつではありますが、すでに始まっています。

 

 

 

2 U=U』と『LIVING TOGETHER』の麗しくも悩ましい関係

 もう少し蛇腹パンフの紹介を続けます。パンフに取り上げられた各項目には、それぞれ300字以内の説明が付けられています。例えば『U=U』は・・・

   ◇

体の中でHIVというウイルスが増えるのを防ぐ治療(抗レトロウイルス治療)を続けていれば、体内のウイルスの量を現在の検査方法では見つけられないほど減らすことができます。

英語ではそれをUndetectable(検出限界値以下)と呼んでいます。頭文字はUです。

その結果、HIVに感染していても健康な状態で生活を続けることができ、同時にセックスで他の人にHIVが感染することもなくなる。その事実が最近の数々の研究で明らかになりました。

つまり、感染が可能ではなくなるという意味からUntransmittableと呼ばれています。こちらも頭文字はU。治療の進歩が感染の予防にも役立つ。U=Uはそれを伝える重要なメッセージです。

   ◇

 300字というのは、パンフレットを手渡され、さっと目を通すぎりぎりの長さ(短さ)でしょうね。それ以上、長くなるともう読まない。次のページもめくらない。

したがって、300字で説明しきれない場合には、次のページにバトンを手渡し、項目間の相乗効果で理解が深められるような工夫もなされています。

U=U』の次のページには『LIVING TOGETHER』が登場します。こちらも紹介しておきましょう。

  ◇

治療の普及による予防効果はTreatment as Prevention(予防としての治療)の頭文字をとってT as Pと呼ばれています。U=Uはこの点に着目し、治療の進歩を生かしてHIV陽性者に対する偏見や差別を解消するためのキャンペーンです。

T as PU=Uも極めて重要なメッセージなのですが、治療を受けているかどうかでHIV陽性者を分けてしまう側面もあります。

現実には、未治療の状態でも、コンドームや一般的な感染対策で予防は可能です。

HIVを持っている人も、そうでない人も、まだ分からない人も、すでに一緒に暮らしている』Living Togetherのこのメッセージは、U=Uとあわせ、ますます重要になっています。

  ◇

 メッセージの比較が成立することで、『U=U』の可能性とともに、危うさにも言及し、それは最後の『COMBINATION予防』にもつながっていきます。ページをめくるワクワク感が少し出てきました。

HIV/エイズ対策は一筋縄ではいきません。検査を受けようと呼びかけただけで、検査を受ける人が増えるわけではない。コンドームを使おうと言えば使う人が増えるとは必ずしも言えない。ほぼ40年にわたるHIV/エイズ対策の長い経験の蓄積を生かし、キャンペーンの説得力を高めていくには、『U=U』も『Living Together』も『COMBINATION予防』も含めた重層的なメッセージが今後、ますます求められていくことになりそうです。

 

 

 

3 検査普及週間と検査相談月間

 6月は東京都のHIV検査相談月間です。また、その最初の1週間である61日から7日までは、厚生労働省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱するHIV検査普及週間でもあります。HIV検査は重要ですが、普及にはまず、検査を受けようかな、どうしようかなと迷っている人に適切な情報が伝わるような仕組みが必要です。迷ったら相談。どこに行けば、あるいはどこに連絡をとれば、相談することができるのか。

その入り口が大切になります。

 

 

 

4 UNAIDSのミシェル・シディベ事務局長が退任

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ事務局長が突然、退任し、母国マリの保健社会福祉大臣に就任しました。UNAIDSの公式サイトには58日付で『ミシェル・シディベ氏がマリの保健社会福祉相に任命されたことを祝福』とのプレス声明が掲載されています。

 今回の退任自体は突然ではありますが、シディベ氏はもともと6月末に事務局長を辞めることが決まっていました。昨年末の段階で、UNAIDS事務局内のセクハラ疑惑への対処をきっかけにした外部委員会の調査により、強権的で身勝手な組織運営を厳しく批判されていたからです。

調査報告書は即時辞任を求める内容でしたが、シディベ氏はこれに対し、2019年末までだった任期を半年、前倒しして6月に退任することを明らかにし、昨年12月の理事会で承認されています。即時辞任ではなく、6月末まで留任する理由は『指導者の秩序ある交代』を果たすためとしていたのですが、その『秩序ある交代』などお構いなしに母国の閣僚ポストに就く結果となりました

 

「UPDATE! エイズ治療のこと HIV検査のこと」6月1、2日にFM放送

 エフエム東京の番組担当の方からコミュニティアクションのサイトに以下のご連絡をいただきました。
 TOKYO FMをはじめとした全国38局ネット番組「秋元才加とJOYのWeekly Japan」(政府広報番組)で6月1日、2日に「UPDATE! エイズ治療のこと HIV検査のこと」を取り上げていただけるそうです(放送時間は地域によって異なるので、番組サイトでご確認ください)。タイトルになっているのは、2018年世界エイズデーの国内啓発キャンペーンのテーマですが、メッセージ自体はいまも生きています。6月1日からHIV検査普及週間が始まるので、そのキックオフでしょうか。


www.gov-online.go.jp

エイズHIVが初めて注目されたのは1980年代。当時は、有効な治療法がなく、エイズは“死に至る病”という印象が多くの方に広まりました。あれから、およそ40年。医療は進歩し、早期発見、早期治療をすれば、感染前と変わらない日常生活を送ることができるようになりました。エイズ治療やHIV検査の情報をアップデートしましょう。6月1日から7日の【HIV検査普及週間】についてもご紹介します》 

f:id:miyatak:20190530214806j:plain

 

 本来ならコミュニティアクション公式サイトのFeatures欄でお知らせすべきなのですが、掲載まで少し時間がかかってしまうので、私のブログで、お知らせの代行をさせていただきます。悪しからず。
 番組の内容については、まったく関与していないので、私には分かりません。お聴きいただいたうえで、感想をお聞かせいただけるようでしたら、お知らせください。なお、テーマの趣旨についてはコミュニティアクションのサイトにも説明がありますので、参考までにご紹介しておきます。

www.ca-aids.jp

 

 

報告の横ばい傾向続く 東京都エイズ通信141号(2019年5月)

 

メルマガ東京都エイズ通信の第141号(20195月)が発行されました。527日までの新規HIV感染者・エイズ患者報告数は、前年同時期と比較するとわずかに上回っています。しかし、その差はHIV感染者報告数で4件、エイズ患者報告数で2件ですから、依然として横ばい傾向の中での増減と観ておいた方がよさそうです。

 

● 平成3111日から令和元年527日までの感染者報告数(東京都)

  ※( )は昨年同時期の報告数

 

HIV感染者     135件  (131件)

AIDS患者        23件   (21件)

合計            158件  (152件)

 

HIV感染者数・AIDS患者数とも昨年同時期を上回るペースで報告されている。

   ◇

 4月から、まぐまぐ!のサイトでバックナンバーを見ることができなくなりました。不便ですね。配信登録はこちらで。

 https://www.mag2.com/m/0001002629.html

 

アジサイの色も微かに雨模様

 猛暑が和らいだので雨が降ったのか、雨が降ったので暑さが和らいだのか。お天気のメカニズムはよく分かりませんが、雨が降ってようやく暑さが和らぎました(思えば、こういうどっちつかずの表現で生き延びてきた人生・・・ま、それはどうでもいいか)。昨日まで暑さにしおれていたアジサイの花も、今日は雨で生気を取り戻したようです。

 

f:id:miyatak:20190528183635j:plain

 和田塚入り口交差点の角。2、3分歩けば海、徒歩4分で江ノ電和田塚駅です。わざわざ名所を訪ねなくても街角を歩いていれば、アジサイめぐりができる季節がすぐそこまでやってきました。時のたつのは速い。2019年ももう半分近く過ぎ・・・。

 

f:id:miyatak:20190528183853j:plain

 だいぶ色づいてきましたが青かなあ、ピンクかなあ。

 

f:id:miyatak:20190528183922j:plain

 どうもピンクっぽいですね。確か去年は青かったけれど、その年によって色が変わるのでしょうか。

 

f:id:miyatak:20190528183955j:plain

 心なしか夕方の西の空はあかるくなってきたような・・・。それにしても今日は車が多いね。