2017年12月1日の世界エイズデーに寄せるドナルド・J・トランプ大統領の声明

 トランプ政権の発足で米国のHIV/エイズ対策はどうなっちゃうのか。あるいはなっちゃったのか・・・。日本国内でもこの一年、HIV/エイズ対策関係者の間では「ほんとに、どうなっちゃうんでしょうねえ」といった会話が、かなり大きな懸念とともに交わされることがよくありましたね。振り返ってみると、とりあえずはあまり大変わりはしていない印象も受けます。

 あれこれとお忙しいようなので、HIV/エイズ対策は後回し。いままでのメンバーでやっといてよ・・・という感じなのかもしれません。米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)を統括するデボラ・バークス大使(地球規模エイズ対策調整官)をはじめ主要ポストの担当者も前政権のままの方が多いようです。この調子で何とかあと3年も過ぎてくれればいいのだけど・・・といった消極的な期待も持ちたくなってきますね。

 ホワイトハウスの公式サイトにトランプ大統領世界エイズデーに寄せた声明が掲載されています。最後の方を読むと、前日の11月30日に署名したと書いてあります。こういうものも、しっかり署名して発表するのですね。公式文書の紋切り型の書き方なのでしょうが、その最後の部分はどう訳したらいいのか、日本語訳にもある程度、型があるのでしょうね。ご存知の方がいたら教えてください。

 それはそれとして、声明は多分、事務方が原稿を書いているのでしょうね。ツィッターのように激しい言葉が飛び交っているというわけではありません。企業優先、アメリカファーストではありますが、まあ、無難な内容ではないかと思います。

 PEPFARは今年からHIV/エイズ流行制御強化戦略(2017~2020年)というのがあるのですね。まったく知らなかったので、機会があったらどんな戦略なのか一応の知識は得ておきたいところです。詳しい方がいらしたら、教えてください。

 以下日本語仮訳です。 

www.whitehouse.gov

 

2017121日の世界エイズデーに寄せるドナルド・Jトランプ大統領の声明

 ヒト免疫不全ウイルス感染(HIV)と後天性免疫不全症候群AIDS)の最初の公式症例が36年前に報告され、その流行は米国全土および世界で何百万という個人、家族、コミュニティに破壊的な影響を及ぼしました。私たちは国民として大きな恐怖と不安を感じながら、この新たな病につて知識を得ようと闘ったのです。その後の数十年で、アメリカが示した官民のリーダーシップと創意、投資、そして同情により、私たちは予防と治療が可能な新たな時代を迎えています。世界エイズデーの今日、私たちはエイズで亡くなった人を偲び、この病との闘いにおける輝かしい成果をたたえ、そして公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結に向けた決意を新たにします。

 HIV/エイズの流行が始まって以来、世界で7600万人がHIVに感染し、3500万人がエイズで亡くなっています。2014年現在で米国には110万人のHIV陽性者が暮らしています。私たちは今日、そのすべてのHIV陽性者、そして愛する人エイズで失った人たちとともに祈りを捧げます。

 私たちはエイズで亡くなった人たち、病と闘っている人たちに思いを致すとともに、HIV/エイズの流行を制御し、終結に導くために努力を続けている人たちをここに称えるものです。HIV予防と治療のための継続的な米国の官民の投資は、大きな成果を上げてきました。2014年の新規HIV感染件数は、2008年当時より18%も減少しており、これは生涯にわたる医療費のコストに換算すると149億ドルの節減になります。国際的な成功も得ています。大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)およびそのデータに基づく50カ国以上の国々とのパートナーシップにより、1330万人の抗レトロウイルス治療を支援しているのです。私たちはこのプログラムを通して思春期の少女と若い女性への支援に引き続き力を入れていきます。サハラ以南のアフリカ諸国では、思春期の少女と若い女性のHIV感染のリスクが若い男性より14倍も高いのです。私たちはDREAMSDetermined, Resilient, Empowered, AIDSfree, Mentored, and Safe)官民パートナーシップにも取り組んでいます。過去2年間にアフリカの最も影響の深刻な10カ国で、若い女性の新規HIV感染を2540%減らしたプログラムです。

 私たちはこれまでに大きな成果を上げてきましたが、それでも毎年、何万というアメリカ人がHIVに感染しています。私の政府は引き続き、自らの感染に気付かずにいるHIV陽性者が検査を受けて感染を知ることができるよう検査普及に投資をしていきます。国際的には、PEPFARHIV/エイズ流行制御強化戦略(20172020年)を速やかに実行していきます。50カ国以上で流行の制御を実現できるようデータを活用して投資と対策を進めていく戦略です。

  アメリカのリーダーシップ、および民間のフィランソロフィーイノベーションによって、何百万という人の命を救い、生活の質を改善することができました。そして流行はいま危機の状態から制御に向かおうとしています。政府、民間企業、慈善団体、国際機関、市民社会・宗教関係組織、HIV陽性者、その他のたくさんのパートナーとともに任務を果たしていけることを私たちは誇りに思っています。

 したがっていま、私ドナルド・J・トランプは米国大統領として、合衆国憲法と法に基づき、2017121日の世界エイズデーに誓います。各州およびプエルトリコ自治連邦区の知事、他の地域の職員、アメリカの人たちに対し、エイズで亡くなった人たちを偲び、HIV陽性者に支援を提供し、思いやりをもって接するために、私とともに行動することを呼びかけます。

 以上のあかしとして、私は20171130日、署名します。

   ドナルド・J・トランプ

 

 

 

President Donald J. Trump Proclaims December 1, 2017, as World AIDS Day

WORLD AIDS DAY, 2017

BY THE PRESIDENT OF THE UNITED STATES OF AMERICA

A PROCLAMATION

The first documented cases of the human immunodeficiency virus infection (HIV) and acquired immune deficiency syndrome (AIDS) 36 years ago became the leading edge of an epidemic that swept across the United States and around the globe, devastating millions of individuals, families, and communities. As a Nation, we felt fear and uncertainty as we struggled to understand this new disease. In the decades since ‑‑ through public and private American leadership, innovation, investment, and compassion ‑‑ we have ushered in a new, hopeful era of prevention and treatment. Today, on World AIDS Day, we honor those who have lost their lives to AIDS, we celebrate the remarkable progress we have made in combatting this disease, and we reaffirm our ongoing commitment to end AIDS as a public health threat.

Since the beginning of the HIV/AIDS epidemic, more than 76 million people around the world have become infected with HIV and 35 million have died from AIDS. As of 2014, 1.1 million people in the United States are living with HIV. On this day, we pray for all those living with HIV, and those who have lost loved ones to AIDS.

As we remember those who have died and those who are suffering, we commend the immense effort people have made to control and end the HIV/AIDS epidemic. In the United States, sustained public and private investments in HIV prevention and treatment have yielded major successes. The number of annual HIV infections fell 18 percent between 2008 and 2014, saving an estimated $14.9 billion in lifetime medical costs. We have also experienced successes around the globe. Through the President's Emergency Plan for AIDS Relief (PEPFAR) and its data-driven investments in partnership with more than 50 countries, we are supporting more than 13.3 million people with lifesaving antiretroviral treatment. We remain deeply committed to supporting adolescent girls and young women through this program, who are up to 14 times more likely to contract HIV than young men in some sub-Saharan African countries. Our efforts also include the DREAMS (Determined, Resilient, Empowered, AIDSfree, Mentored, and Safe) public-private partnership, which has resulted in a 25–40 percent decline in new HIV infections among young women in districts in 10 highly affected African countries during the last 2 years.

While we have made considerable progress in recent decades, tens of thousands of Americans are infected with HIV every year. My Administration will continue to invest in testing initiatives to help people who are unaware they are living with HIV learn their status. Internationally, we will rapidly implement the recent PEPFAR Strategy for Accelerating HIV/AIDS Epidemic Control (2017-2020), which uses data to guide investments and efforts in more than 50 countries to reach epidemic control.

Due to America's leadership and private sector philanthropy and innovation, we have saved and improved millions of lives and shifted the HIV/AIDS epidemic from crisis toward control. We are proud to continue our work with many partners, including governments, private-sector companies, philanthropic organizations, multilateral institutions, civil society and faith-based organizations, people living with HIV, and many others.

NOW, THEREFORE, I, DONALD J. TRUMP, President of the United States of America, by virtue of the authority vested in me by the Constitution and laws of the United States, do hereby proclaim December 1, 2017, as World AIDS Day. I urge the Governors of the States and the Commonwealth of Puerto Rico, officials of the other territories subject to the jurisdiction of the United States, and the American people to join me in appropriate activities to remember those who have lost their lives to AIDS and to provide support and compassion to those living with HIV.

IN WITNESS WHEREOF, I have hereunto set my hand this thirtieth day of November, in the year of our Lord two thousand seventeen, and of the Independence of the United States of America the two hundred and forty-second.

DONALD J. TRUMP

『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか』 TOP-HAT News 第111号

 感染を公表しているかどうかは別にして、私の周囲には、そしておそらくは皆さんの周囲にも、たくさんのHIV陽性者が暮らしています。(あっと、しまった。もちろん、皆さんの中にはHIVに感染している人も、していない人も、しているかいないか知らない人もいます。そのことは大慌てで付け加えておかないと・・・)。

 個人的には、親しい陽性者の多くからHIV感染を予防することの大切さについてお話をうかがい、予防のための対策に取り組む姿も見ているので、それは何か、当たり前のことであるように感じていました。

でも、正面切って『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか』と聞かれると、あれこれ忖度はしてみたものの、なかなかうまく答えられません。

どうしてなんでしょうね。当たり前のようで、当たり前でもないその疑問に対し、世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)のローレル・スプレイグ事務局長が答えています。

HIV予防において、HIV陽性者が担える役割は、2つの重要なメッセージを明確に伝えることです』

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1010日ジュネーブで開かれた『世界HIV予防連合』の創設会合(写真、UNAIDSプレスリリースから)における演説の一節です。要約するとそれは以下の2つでした。

 1 HIV検査で陽性となったとしても、大丈夫ですよ。

 2 でも、現状ではHIVに感染していない方が生活は楽ですよ。

スプレイグ事務局長はまた、『HIV予防については、人びとを脅すようなメッセージが使われることがあまりにもしばしばありました。HIV陽性者はまるで悪魔であるかのように描かれるのです。こんなやり方ではうまくいくわけがありません』とも述べています。そうそう、そうだよね!と私などは思わず、激しく賛同してしまいました。

もうちょっと説明が必要ですね。続きはTOP-HAT News 111号の《はじめに 『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか』》をご覧ください。

 

 

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        第111号(201711月)

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TOP-HAT News特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに 『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか』

 

2 ピーター・サンズ氏を任命 グローバルファンド新事務局長

 

3 『私の健康、私の権利』 UNAIDS世界エイズデー啓発キャンペーン

 

4  パレードは56日(日) TOKYO RAINBOW PRIDE 2018 

 

◇◆◇◆◇◆

 

1 はじめに 『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか』

 HIV/エイズの流行に大きな影響を受けている国連加盟国の政府や国連機関市民社会組織などが参加する『世界HIV予防連合』が1010日にジュネーブで創設会合を開きました。このことはすでにTOP-HAT News110号(201710月)でも紹介してありますが、『世界全体で新規HIV感染を75%減らすためのロードマップ』というタイトルの短い記事だったので、予防連合自体については1行分しか言及していません。

 したがってHIV陽性者の国際組織である世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)がこの会合に参加し、ローレル・スプレイグGNP+事務局長が『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか』という注目すべきテーマで演説を行ったことにも触れないままでした。

HIVに感染している人はもう予防とは関係ないでしょ?」といった疑問や質問はきっと、GNP+にもしばしば寄せられるのでしょうね。

「いや、そうではなくて・・・」と説明するのは簡単なようで、なかなか難しい。

GNP+の公式サイトには『世界HIV予防連合の創設会合におけるローレル・スプレイグ事務局長の力強い声明』という見出しでこのときの演説要旨が掲載されています。「ああ、そうなのか」と論点が分かりやすく説明されているので、改めて紹介しておきましょう。

www.gnpplus.net

 

わが国のHIV予防対策にとっても示唆に富む内容を含んでいます・・・と言っても英文のままではなかなか読む気になりませんね。エイズソサエティ研究会議では、演説要旨の日本語仮訳をほぼ全文に近いかたちで作成し、HATプロジェクトのブログに掲載しました。こちらもあわせてご覧ください。

http://asajp.at.webry.info/201710/article_3.html

 

スプレイグ事務局長は演説の中で『HIV予防において、HIV陽性者が担える役割は、2つの重要なメッセージを明確に伝えることです』と述べています。思い切って意訳すれば以下の2点でしょうか。

 

 1 HIV検査で陽性となったとしても、大丈夫ですよ。

 2 でも、現状ではHIVに感染していない方が生活は楽ですよ。

 

 さらに検査でHIV陽性とわかったばかりの人には『あなたが生き残るために必要なものはもう、すべてこの世界にありますよ』と伝えたうえで、相矛盾する印象もある上記2メッセージについて「矛盾はしません」と次のように述べています。

 『HIV予防については、人びとを脅すようなメッセージが使われることがあまりにもしばしばありました。HIV陽性者はまるで悪魔であるかのように描かれるのです。こんなやり方ではうまくいくわけがありません』

どうも海の向こうの話というわけでもなさそうですね。

『医学的な理由であれ、社会的な偏見のためであれ、HIV検査の結果を恐れるようになればなるほど、感染を心配する人は検査を受けようとしなくなります。安心してHIVについて語り、HIV検査を受けられること、そしてHIVに感染した状態で生活を続けていけること、それが伝わることがHIVに感染しないでいることを容易にします』

 演説は目新しい考えを述べているわけではありません。治療の進歩によって注目されている『予防としての治療(T as P)』が成立する前提としても『予防としての支援(S as P)』が必要です。これはHIV陽性者やHIVに影響を受けてきた人たちが30年も前から繰り返し、機会があるごとに主張してきたことでもあります。

 『それでもなお、HIV陽性者は予防の議論の中では、失敗者として排除されることが、あまりにもしばしば起きています』

 そうした経緯を踏まえ、スプレイグ事務局長は演説の中で『わずかの時間でいいのですが』と呼びかけました。

HIV陽性者を予防の失敗者として考えていなかったかどうか、皆さんの胸に問い直してください。そしてパートナーであり、同時に予防に関する知識が最も豊富な人として、私たちのことをもう一度、思い浮かべてください』

日本のHIV/エイズ対策に取り組む人たちの間でも、共有しておきたい認識というべきでしょう。

 

 

 

2 ピーター・サンズ氏を任命 グローバルファンド新事務局長

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)理事会は1114日、事務局長に元スタンダード・チャータード銀行最高経営責任者CEO)のピーター・サンズ氏を任命しました。サンズ氏は任命の知らせを受け「感染症は今日、人類が直面する最も深刻な危機の一つです。私たちが協力して資金を調達し、強靭な保健システムを構築し、地域において有効な対応を策定すれば、三大感染症の流行に終止符を打ち、繁栄を促進し、グローバルな健康安全保障を強化できます」と語っています。

グローバルファンドは事務局長選考が難航し、マーク・ダイブル前事務局長が任期満了で5月末に退任した後は、マライケ・ヴェインロクス官房長が事務局長代行を務めていました。

 

 

 

3 『私の健康、私の権利』 UNAIDS世界エイズデー啓発キャンペーン

 121日の世界エイズデーに向けて、世界各国、各都市はそれぞれのテーマを掲げて啓発キャンペーンを展開しています。今年の日本国内のテーマは、すでにお伝えしているように《UPDATE エイズのイメージを変えよう》です。

 東京都エイズ予防月間(1116日~1215日)のテーマは《私たちにできる事》。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)も国境を越えてキャンペーンを展開しているので紹介しておきましょう。

テーマは《My health, my right(私の健康、私の権利)》。今年は基本的人権の一つである『健康の権利』を中心に据えています。一人一人の健康の権利が尊重されなければ、検査の普及をはかることも、治療を広げていくこともできません。したがって、公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行の終結も、健康の権利を尊重しなければありえませんというメッセージです。

キャンペーンのパンフレットは日本語でも入手することができます。API-Netエイズ予防情報ネット)でPDF日本語版をダウンロードしてください。

 http://api-net.jfap.or.jp/

 

米国は111日、HIV.gov の公式サイトでデボラ・バークス大使(エイズ対策調整官)のメッセージとともにテーマを発表しました。

Increasing Impact Through Transparency, Accountability, and Partnerships(透明性と説明責任とパートナーシップで成果を上げる)》

う~ん。バークス大使のメッセージはエイズソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログに日本語仮訳が掲載されています。

http://asajp.at.webry.info/201711/article_2.html

 

 

 

4  パレードは56日(日) TOKYO RAINBOW PRIDE 2018

『パレード』と『フェスタ』をメインイベントとするTOKYO RAINBOW PRIDE 2018の開催案内がオフィシャルWebサイトに掲載されています。

http://tokyorainbowpride.com/

《『東京レインボープライド』は、 性的指向性自認SOGISexual Orientation, Gender Identity)のいかんにかかわらず、差別や偏見にさらされることなく、より自分らしく、各個人が幸せを追求していくことができる社会の実現を目指すイベントの総称です》(オフィシャルWebサイトから)

 フェスタDAYは年55日(土)、パレードDAY56日(日)となります。会場は代々木公園イベント広場です。また、428日(土)~56日(日)は『レインボーウィーク』として東京都内を中心に全国各所でイベントが実施される予定です。

 

男性は『Blind Spot(死角)』 UNAIDS世界エイズデー報告書

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が2017年世界エイズデーに発表した報告書『blind spot』は男性に焦点を当てています。そのプレスリリースの日本語仮訳です。

 『女性、少女のHIVリスクを高めている不平等に取り組むこと』が現在のHIV/エイズ対策の最優先事項であることを踏まえたうえで、『女性に比べると男性は、HIV検査を受けず、抗レトロウイルス治療へのアクセスが少なく、エイズ関連の疾病で死亡する傾向が強い』という現状にも注意を喚起し、『男らしさ』にまつわる有害な社会規範が男性の健康リスクを高めている現状を改善するよう求めています。

 

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男性はHIV治療を受けず、エイズ関連の疾病で死亡する傾向が強い 世界エイズデーに際し、UNAIDSが警告

 新たな報告書でHIVサービス提供のblind spot(死角)となっている男性に言及

www.unaids.org

 

 オタワ/ジュネーブ 2017.12.1 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新たな報告書を世界エイズデーに発表した。女性に比べると男性は、HIV検査を受けず、抗レトロウイルス治療へのアクセスが少なく、エイズ関連の疾病で死亡する傾向が強いことを取り上げている。報告書『Blind spot』によると、世界全体で見るとHIV陽性者で治療を受けている人の割合は男性の場合、半数以下であり、女性の60%より低い。男性は女性よりも治療の時期が遅く、治療を中断したり、経過観察ができなくなったりする傾向も強い。

 「女性、少女のHIVリスクを高めている不平等に取り組むことは、エイズ対策の最優先事項です」とミシェル・シディベ事務局長はいう。「しかし、男性がblind spot(死角)になっているという現実もあります。男性は女性と比べると、HIV予防のサービスを利用せず、HIV検査を受けず、治療も受けようとしない傾向があります」

 サハラ以南のアフリカでは、男性、少年のHIV陽性者は、女性、少女の陽性者より20%も自らの感染を知っている割合が低く、治療を受ける割合も27%低い。南アフリカで最もHIV陽性率が高いクワズル・ナタール州の2015年の推計では、20~24歳のHIV陽性の男性で自分の感染を知っている人は4人に1人だった。

 効果的なHIV対策の普及に苦闘する西部・中部アフリカでは、HIV陽性の男性で治療を受けている人は25%にとどまっている。HIV治療を受けていない人からは、他の人にHIVが感染する可能性が高くなる。

 「男性がHIVの予防や治療のサービスを利用すれば、3つの配当が得られます」とシディベ事務局長はいう。「自分自身を守り、性パートナーを守り、家族を守ることができるのです」

 報告書はサハラ以南のアフリカからのデータを強調している。年長の男性は、不定期のパートナーとのセックスの際にコンドームを使用する割合が低く、HIV陽性である可能性は高い。40~44歳の男性の50%、50~59歳の男性の90%はコンドームを使わないと答えている。こうしたデータは、HIV陽性率が高い地域では、年長男性から若い女性へ、そして成人女性から同年代の男性へという感染のサイクルが存在するという研究報告とも符合する。

 『Blind spot』は、キーポピュレーションで男性のHIV陽性率が高いことも指摘している。東部・南部アフリカ以外では、成人の新規HIV感染の60%は男性である。報告書は、差別や嫌がらせ、保健サービス提供の拒否など、キーポピュレーションの男性のHIVサービス利用をとりわけ困難にしている要因も示している。

 男性とセックスをする男性は男性一般に比べると24倍もHIVに感染する可能性が高く、男性とセックスをする男性のHIV陽性率が15%以上の国も20カ国以上ある。それなのに、最近の調査では、オーストラリア、ヨーロッパ、米国でコンドーム使用が減っていることが示唆されている。米国ではたとえば、2011年と2014年を比較すると、ゲイ男性など男性とセックスをする男性の間で、性行為の際にコンドームを使用しない割合は、35%から41%へと増加している。

 「安心している場合ではありません」とシディベ氏はいう。「その間にHIVが定着し、2030年のエイズ終結への希望は閉ざされてしまいます」

 『Blind spot』は、注射薬物使用者1180万人の80%が男性であり、数カ国では注射薬物使用者のHIV陽性率が25%を超えているということも報告している。コンドームの使用率は注射薬物使用者の間ではどこでも低く、直近の薬物注射の際に消毒した注射器、注射針を使っていた人の割合は国によって異なっていた。たとえば、ウクライナでは、直近の注射の際に消毒した注射針を使った人は90%を大きく上回っている。一方で、米国では35%前後なのだ。

 刑務所では、受刑者の90%は男性であり、HIV陽性率は3~8%と推計されているが、コンドームやハームリダクションのサービスを受刑者が利用できる状態にはほとんどない。

 女性に対するHIV検査は、とりわけ産科サービスを通じて提供することができるが、男性の場合にはそうしたエントリーポイントが見つからず、HIV検査についての理解が広がるのを制限する結果になっている。

 「男らしさに対する誤った思い込みと、男性についてのステレオタイプの見方によって、男性の間では、セーファーセックスを実践したり、HIV検査を受けたり、治療を続けたり、あるいはセクシャリティについて話したりすることでさえも、困難な環境がつくられています」とシディベ事務局長は述べている。「しかし、男性にも責任感が必要です。そうでないと、こうした虚勢が生命を奪うことになります」

 報告書は、それぞれの年齢に適した包括的なセクシャリティ教育を早い段階から少年少女に提供できるようにするための投資の必要性を指摘している。そうした教育を通して、少年と少女の両方がジェンダーの平等について考え、人権に基づいて健康的な関係を生み出し、健康を守れるような行動をとれるようにしなければならない。

 報告書によると、男性は女性に比べ、保健医療施設を訪れる頻度が低く、健康診断もあまり受けず、生命にかかわる状態の診断時期も遅い。ウガンダでは、弱虫と言われるのが嫌だから、HIVに感染しているかどうかなどということは知りたくないし、治療も受けたくないという男性もいた。南アフリカのある研究では、エイズ関連の疾病で亡くなった男性の70%は一度もHIVケアを求めたことはなかった。

 報告書は、保健医療サービスを男性にとって利用しやすくし、男性の利用者を増やすためのHIVプログラムを求めている。そのためには、利用時間の拡大、薬局の活用、働く場所およびパブやスポーツクラブなど余暇を過ごす場所でのサービス提供、携帯やappなどのコミュニケーション・テクノロジーの活用といった利用者に合わせたサービスが必要になる。

 また、HIVサービスの利用を妨げる障壁、とりわけキーポピュレーションに対する障壁を取り除き、男性・少年の多様なニーズと現実に対応できる支援的な法的と政策的環境を整えるよう求めている。Blind spotは男性がHIVに感染せずにいいられるようにし、検査を定期的に受け、HIV陽性なら治療を継続することによって、その利益は本人の健康状態を改善することだけではなく、女性・少女の新規HIV感染を減らし、有害なジェンダー規範を変えていく点にもあるとしている。

  

 

On World AIDS Day, UNAIDS warns that men are less likely to access HIV treatment and more likely to die of AIDS-related illnesses

New report from UNAIDS shows the blind spot in reaching men with HIV services

 

OTTAWA/GENEVA, 1 December 2017—On World AIDS Day, UNAIDS has released a new report showing that men are less likely to take an HIV test, less likely to access antiretroviral therapy and more likely to die of AIDS-related illnesses than women. The Blind spot shows that globally less than half of men living with HIV are on treatment, compared to 60% of women. Studies show that men are more likely than women to start treatment late, to interrupt treatment and to be lost to treatment follow-up.

“Addressing the inequalities that put women and girls at risk of HIV is at the forefront of the AIDS response,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “But there is a blind spot for men—men are not using services to prevent HIV or to test for HIV and are not accessing treatment on the scale that women are.”

In sub-Saharan Africa, men and boys living with HIV are 20% less likely than women and girls living with HIV to know their HIV status, and 27% less likely to be accessing treatment. In KwaZulu-Natal, the province with the highest HIV prevalence in South Africa, only one in four men aged 20–24 years living with HIV in 2015 knew that they had the virus.

In western and central Africa, a region that is struggling to respond effectively to HIV, only 25% of men living with HIV are accessing treatment. When people are not on treatment they are more likely to transmit HIV.

“When men access HIV prevention and treatment services, there is a triple dividend,” said Mr Sidibé. “They protect themselves, they protect their sexual partners and they protect their families.”

The report highlights data from sub-Saharan Africa that show that condom use during sex with a non-regular partner is low among older men, who are also more likely to be living with HIV—50% of men aged 40–44 years and 90% of men aged 55–59 years reported not using a condom. These data are consistent with studies showing a cycle of HIV transmission from older men to younger women, and from adult women to adult men of a similar age in places with high HIV prevalence.

The Blind spot also shows that HIV prevalence is consistently higher among men within key populations. Outside of eastern and southern Africa, 60% of all new HIV infections among adults are among men. The report outlines the particular difficulties men in key populations face in accessing HIV services, including discrimination, harassment and denial of health services.

Men who have sex with men are 24 times more likely to acquire HIV than men in the general population and in over two dozen countries HIV prevalence among men who have sex with men is 15% or higher. However, recent studies suggest that condom use is dropping in Australia, Europe and the United States of America. In the United States, for example, the percentage of HIV-negative gay men and other men who have sex with men who engage in sex without using condoms increased from 35% to 41% between 2011 and 2014.

 “We cannot let complacency set in,” said Mr Sidibé. “If complacency sets in, HIV will take hold and our hopes of ending AIDS by 2030 will be shattered.”

The Blind spot shows that around 80% of the 11.8 million people who inject drugs are men and that HIV prevalence among people who inject drugs exceeds 25% in several countries. Condom use is almost universally low among people who inject drugs and the percentage of men who inject drugs using sterile injecting equipment during their last drug injection varies from country to country. In Ukraine, for example, the percentage of men who inject drugs who used a sterile needle at last injection was well over 90%, whereas in the United States only around 35% used a sterile needle.

In prisons, where 90% of detainees are men, HIV prevalence is estimated at between 3% and 8%, yet condoms and harm reduction services are rarely made available to detainees.

While HIV testing has been able to reach women, particularly women using antenatal services, the same entry points have not been found for men, limiting uptake of HIV testing among men.

“The concept of harmful masculinity and male stereotypes create conditions that make having safer sex, taking an HIV test, accessing and adhering to treatment—or even having conversations about sexuality—a challenge for men,” said Mr Sidibé. “But men need to take responsibility. This bravado is costing lives.”

The report shows the need to invest in boys and girls at an early age, ensuring that they have access to age-appropriate comprehensive sexuality education that addresses gender equality and is based on human rights, creating healthy relationships and promoting heath-seeking behaviour for both girls and boys.

The report shows that men visit health-care facilities less frequently than women, have fewer health checks and are diagnosed with life-threatening conditions at later stages than women. In Uganda, some men reported they would rather avoid knowing their HIV status and receiving life-saving treatment because they associated being HIV-positive with emasculating stigma. One study in South Africa showed that 70% of men who had died from AIDS-related illnesses had never sought care for HIV.

The report urges HIV programmes to boost men’s use of health services and to make services more easily available to men. This includes making tailored health services available, including extending operating hours, using pharmacies to deliver health services to men, reaching men in their places of work and leisure, including pubs and sports clubs, and using new communications technologies, such as mobile phone apps.

It also urges a supportive legal and policy environment that addresses the common barriers to accessing HIV services, especially for key populations, and can accommodate the diverse needs and realities of men and boys. 

The Blind spot shows that by enabling men to stay free from HIV, get tested regularly and start and stay on treatment if HIV-positive, the benefits will not only improve male health outcomes, but will contribute to declines in new HIV infections among women and girls and to altering harmful gender norms.

2018サッカーW杯のUNAIDS特別大使にビクトリア・ロピレヴァさんを任命

2018年のサッカーW杯ロシア大会のグループリーグ組み合わせは世界エイズデーと同じ121日午後6時日本時間2日午前零時)からモスクワ郊外のクレムリンパレスというコンサートホールで開かれるそうです。その前日の1130日に同じくクレムリンパレスでUNAIDS2018W杯特別大使にミスロシア(2003年)のビクトリア・ロピレヴァさんが任命されました。その発表記事の日本語仮訳です。

日本では一夜、明ければ組み合わせ抽選結果の話題で持ちきりでしょうから、なんとか日付が変わらないうちに載せておこうと大急ぎで訳しました。

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UNAIDSの公式サイトに掲載されている写真でご覧の通り、きれいな方なので、ついついロシアに対する採点も甘くなってしまいそうですが、HIV/エイズの状況はかなり危機的です。性的少数者に対する人権状況はソチ五輪当時と比べて好転したのか。それも気になるところです。W杯で日本はどのグループに属し、対戦相手はどこになるのか。それももちろん、サッカーファンにとっては重要なニュースですが、この機会にHIV/エイズに関する目配りもよろしく。

 

 

2018サッカーW杯のUNAIDS特別大使にビクトリア・ロピレヴァさんを任命

    20171130

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/featurestories/2017/november/20171130_victoria-lopyreva

 

 ロシアで開催される2018年サッカーW杯でHIVへの関心を高め、差別ゼロを目指すために、ビクトリア・ロピレヴァさんが国連合同エイズ計画(UNAIDS)の特別大使に任命された。世界エイズデー前夜であり、サッカーW杯グループリーグ組み合わせ抽選会の前夜でもある1130日、UNAIDSがロシアの首都モスクワのクレムリンパレスで発表した。

 「UNAIDS特別大使として、ビクトリア・ロピレヴァさんは2018年サッカーW杯でHIVおよび感染予防への関心を高める役割を担います。W杯にやってくる何百万もの人たちにHIV感染から自らを守り、人種や国籍、HIV感染の有無による差別をゼロにするためのチャンピオンになりましょうと呼びかけます」とUNAIDS東欧・中央アジア地域支援チームのヴィナイ・P・サルダンハ代表はいう。

 「2018年サッカーW杯のUNAIDS特別大使を喜んでお受けします」とロピレヴァさんは語った。「サッカーは世界中の国々から集まる選手、チーム、ファンの世代を超えた連帯を生み出す特別な現象です。2018年サッカーW杯は新たな素晴らしいゴールをあげるまたとない機会です。エイズ流行終結と差別ゼロの達成というゴールです」

 「ロシアのサッカーW杯大使としてのビクトリア・ロピレヴァさんの日々の貢献を高く評価しています。彼女の情熱と献身とエネルギーはまちがいなくロシア国内および国外におけるHIVエイズに対する関心を高めてくれるでしょう。ピッチの内と外におけるあらゆるかたちの差別と闘ううえで、ビクトリアが果たしてきた大きな貢献は、FIFAが誇りとするものです。UNAIDS特別大使としても大きな成功を収めることを願っています」とFIFAのファトマ・サムーラ事務局長は語る。

 エイズの流行の開始以来、これまでに7800万人がHIVに感染し、3500万人がエイズ関連の疾病で死亡している。2016年の年間の新規HIV感染者は約180万人で、ピークだった1990年代後半の年間300万人と比べると、39%減少している。東欧・中央アジアでは、新規HIV感染は2010年当時より60%増加し、エイズ関連の死者も27%増えている。政府統計によると、ロシアのHIV陽性者数は現在90万人以上となっている。

 ロピレヴァさんは2003年のミスロシアで、201510月から2018年サッカーW杯公式大使を務めている。2017年にロシアのソチで開かれた第19回世界青年学生祭典の大使を務め、テレビプレゼンター、イベントホスト、講演者、モデルとしても活躍している。

 

 

Victoria Lopyreva appointed as a UNAIDS Special Ambassador for the 2018 FIFA World Cup     30 November 2017

 

Victoria Lopyreva has been appointed as a UNAIDS Special Ambassador, tasked with highlighting HIV awareness and promoting zero discrimination during the 2018 FIFA World Cup, which will be held in the Russian Federation. The announcement was made by UNAIDS in Moscow, Russian Federation, on the eve of World AIDS Day and the final draw for the 2018 FIFA World Cup at the State Kremlin Palace.

In her new capacity as a UNAIDS Special Ambassador, Victoria Lopyreva will highlight HIV awareness and prevention during the 2018 FIFA World Cup. She will encourage millions of people coming to the World Cup to protect themselves from HIV and champion zero discrimination on the basis of race, nationality or HIV status,” said Vinay P. Saldanha, Director for the UNAIDS Regional Support Team for Eastern Europe and Central Asia.

It is my pleasure to accept the role as UNAIDS Special Ambassador for the 2018 FIFA World Cup,” said Ms Lopyreva. “Football is a unique global phenomenon, uniting players, teams and fans from different countries, nationalities and ages. The 2018 FIFA World Cup is a unique opportunity to promote another amazing goal—to unite a winning team to end the AIDS epidemic and reach zero discrimination.”

"I appreciate and value every day Victoria Lopyreva's commitment as FIFA World Cup 2018 Ambassador in Russia. Her passion, her dedication and her energy will definitely help raise awareness on HIV and AIDS in and outside Russia. Victoria's contribution to fighting all forms of discrimination in and off the pitch is something that FIFA can be proud of and I wish her full success in her additional role as UNAIDS Special Ambassador in Russia,” said  Fatma  Samoura, FIFA Secretary General.

Since the beginning of the AIDS epidemic, 78 million people have become infected with HIV and 35 million have died from AIDS-related illnesses. In 2016, around 1.8 million people were newly infected with HIV, a 39% decrease from the 3 million who became newly infected at the peak of the epidemic in the late 1990s. In eastern Europe and central Asia, new HIV infections have risen by 60% since 2010 and AIDS-related deaths by 27%. According to government data, more than 900 000 people are currently living with HIV in the Russian Federation.

Ms Lopyreva was crowned Miss Russia in 2003 and since October 2015 has been an official Ambassador of the 2018 FIFA World Cup. Ms Lopyreva also served as an Ambassador for the XIX World Festival of Youth and Students 2017, held in Sochi, Russian Federation, and works as a television presenter, event host, motivational speaker and model.

「こけしオカン」はなぜ参上したのか エイズと社会ウェブ版313

 コミュニティアクションのFeatures欄に昨日、《こけしオカン 一部で人気沸騰中》というニュースを掲載しました。さすがに沸騰しているのは『一部』なので、まだ知らない人の方が多そうですね。 

www.ca-aids.jp

 公益財団法人エイズ予防財団の「男性向けHIV検査促進メッセージ広告」です。こちらで動画をご覧ください。

HIV検査 イキやぁぁぁぁ! | 公益財団法人 エイズ予防財団

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《その一方でポピュレーションアプローチとしては、男女が意識されることなく展開されており、そのテイストやメッセージは、感染の可能性の高い成人男性を意識したものは少なく、むしろ青少年や女性を意識したものが多くありました。実際、AC 広告やエイズ予防のための戦略研究で展開された いくつかのキャンペーンでは、女性の受検行動を促進した傾向がうかがえました》

 こけしオカン登場の背景には、こんな現状分析があったということですね。したがって・・・。

《日本のHIV感染報告・AIDS発症報告の大部分を占める男性にHIV感染を自分の問題として考えてもらいHIV検査を受けてもらう。そのために、まず、HIV感染症AIDSに関する話題づくりを目的としました》

 「話題づくり」と言い切る思い切りのよさに期待したいところですが、同時にエイズ予防財団は心配性というか・・・、《不快に感じる方があるかもしれません。趣旨をご理解いただき、ご容赦いただければと思います》と低姿勢でもあります。

 

 

横ばいはコメントしづらい・・・などと言わずに

メルマガ「東京都エイズ通信」の第123号が発行されました。

archives.mag2.com

毎月発表されているHIV感染者・エイズ患者報告数の速報は以下の通りです。

    

 平成2912日から平成291126日までの感染者報告数(東京都)

   )は昨年同時期の報告数

 

 HIV感染者           338件  (331件)

 AIDS患者               87件   ( 90件)

   合計                    425件   (421件)

 HIV感染者数、AIDS患者数ともに昨年同時期と同程度になっています。

    

HIV感染者・エイズ患者報告の合計数が前月をわずかに上回っています。今年は前年同期との比較で少し多かったり、少なかったりを繰り返して年末なりました。報告から類推すると、新規感染も横ばいなのかなあ(つまり顕著に減少しているわけではない)という印象の1年です。流行に対する関心の低下が指摘される中での横ばいは、かなり懸念材料かなあ。

情報を伝える側からすると、横ばいはコメントしづらい。したがってなかなか話題にもならず、関心は低下していくといった事情もあるかもしれません。もちろん、報告数が増え、コメントしやすくなればいいというものではないので、なんとかこの状態を維持していることへの関心を高める工夫も必要です。それがあれば好材料、なければ懸念材料ということかもしれません。

ということで、東京都主催のエイズ予防月間講演会のお知らせも紹介しておきましょう

 

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   『HIV陽性者とともに働くために~ウイルス性肝炎の経験から~』 

   124日(月)19時~21時 

   コンファレンススクエア エムプラス(千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル10F

  申込締切は121日(明日ですね)。まだ間に合う。

 

 

ミシェル・シディベUNAIDS事務局長がメッセージ 2017世界エイズデー

121日の世界エイズデーに向けて、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ事務局長のメッセージが、プレスステートメントとして発表されました。

今年のエイズデー・キャンペーンのテーマである『健康の権利』がメッセージでも強調されており、シディベ事務局長は『2030年のエイズ終結を含めた持続可能な開発目標(SDGs)も、健康の権利を抜きにしては実現しません』と述べています。

UNAIDSのキャンペーンについては、パンフレット『私の健康 私の権利』の日本語版PDFAPI-Netエイズ予防情報ネット)に掲載されているので、そちらをご覧ください。 

 http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20171109

 

 以下、UNAIDSの公式サイトに掲載されたプレスステートメントの日本語仮訳です。

 

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世界エイズデー UNAIDS事務局長メッセージ 2017121

 ミシェル・シディベ  UNAIDS事務局長、国連事務次長

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2017/november/2017_wad_exd_message

 

 2017世界エイズデーに向けて、私たちは健康の権利を重視し、その権利を実現するうえでHIV陽性者やHIVに影響を受けている人たちが直面する課題を強調しました。

 健康の権利は基本的な人権です。『経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約』が示すように、すべての人は「到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利」を有しています。

 2030年のエイズ終結を含めた持続可能な開発目標(SDGs)も、健康の権利を抜きにしては実現しません。健康の権利は、衛生や食糧、適切な住居、健全な労働環境、清潔な環境など他の多くの権利とも相互に関係するものです。

 健康の権利はさまざまなことを意味しています。保健医療に関して誰かが他の人より特に大きな権利を有しているわけではないこと;保健医療の基盤が適切であること;保健医療サービスは丁寧で差別がないものであること;保健医療は医学的に適切で質が高くなければならないことなどです。しかし、健康の権利はそれにとどまるものではありません。健康の権利によって人びとは夢と希望を実現できるのです。

 私たちは世界エイズデーを迎えるたびに、エイズ関連の疾病で亡くなった家族や友人を思い、すべてのHIV陽性者、HIVに影響を受けている人たちとの連帯を確認します。

 流行の初期段階から、エイズ対策は健康と福祉という基本的人権に基づいて組み立てられてきました。エイズコミュニティは健康の権利を重視したシステムを推し進め、世界がHIVの予防や治療に理解を深められるよう努力してきました。

 あまりにも多くの人たち、とりわけ社会から排除されやすく、最もHIVに影響を受けている人たちが、緊急に必要な保健、社会サービスを利用することにさえ、困難を感じています。私たちすべてが、取り残された人たちと肩を組み、誰一人として人権を否定されることがないように力を尽くしていく必要があります。

 今年は2030年のエイズ終結に向けた90-90-90治療ターゲットの達成に大きな進展が見られた年でした。約2100万人のHIV陽性者が治療を受けています。HIVの新規感染とエイズ関連の死者は世界の多くの地域で減少しています。しかし、満足はできません。東欧・中央アジアでは、2010年と比べると年間の新規HIV感染が60%も増えています。エイズ関連の死者も27%増です。西部・中部アフリカはいまも取り残されています。HIV陽性者の3分の2が治療を受けられずにいるのです。エイズ終結に二速アプローチはありません。

 大きな成果にも関わらず、エイズは終わっていません。しかし、誰もが、どこでも、健康の権利を保障されるようになれば、エイズ終結は可能です。

 

 

 

World AIDS Day message from UNAIDS Executive Director

1 December 2017

Michel Sidibé

Executive Director of UNAIDS

Under-Secretary-General of the United Nations

This World AIDS Day, we are highlighting the importance of the right to health and the challenges that people living with and affected by HIV face in fulfilling that right.

The right to health is a fundamental human right—everybody has the right to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health, as enshrined in the International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights.

The world will not achieve the Sustainable Development Goals—which include the target of ending AIDS by 2030—without people attaining their right to health. The right to health is interrelated with a range of other rights, including the rights to sanitation, food, decent housing, healthy working conditions and a clean environment.

The right to health means many different things: that no one person has a greater right to health care than anyone else; that there is adequate health-care infrastructure; that health-care services are respectful and non-discriminatory; and that health care must be medically appropriate and of good quality. But the right to health is more than that—by attaining the right to health, people’s dreams and promises can be fulfilled.

On every World AIDS Day, we look back to remember our family members and friends who have died from AIDS-related illnesses and recommit our solidarity with all who are living with or affected by HIV.

From the beginning, the AIDS response was built on the fundamental right to health and well-being. The AIDS community advocated for rights-based systems for health and to accelerate efforts for the world to understand HIV: how to prevent it and how to treat it.

Too many people—especially those who are the most marginalized and most affected by HIV—still face challenges in accessing the health and social services they urgently need. We all must continue to stand shoulder to shoulder with the people being left behind and demand that no one is denied their human rights.

This year has seen significant steps on the way to meeting the 90–90–90 treatment targets towards ending AIDS by 2030. Nearly 21 million people living with HIV are now on treatment and new HIV infections and AIDS-related deaths are declining in many parts of the world. But we shouldn’t be complacent. In eastern Europe and central Asia, new HIV infections have risen by 60% since 2010 and AIDS-related deaths by 27%. Western and central Africa is still being left behind. Two out of three people are not accessing treatment. We cannot have a two-speed approach to ending AIDS.

For all the successes, AIDS is not yet over. But by ensuring that everyone, everywhere accesses their right to health, it can be.